老犬の介護用品はどれから揃える?段階別の必要リストと費用の実測データ

老犬の介護用品を検索すると、ハーネス、車椅子、介護食器、床ずれマット、オムツと、数十種類の商品が並びます。全部そろえると数万円。けれど実際の介護では、段階に合わない用品は一度も使われないまま終わることが珍しくありません。

この記事では、介護用品を「今買うもの」と「まだ買わなくていいもの」に分けて、段階別に整理します。判断の軸に使うのは、当サイトが全国の老犬ホーム・老猫ホーム120施設を調査して集めた一次データです。介護のプロである施設が、何に手間(=料金)をかけているかが分かれば、家庭でどの道具が本当に働くかを逆算できます。

介護用品は「段階」で選ぶ。最初に全部買わない

老犬の介護は、おおむね次の3段階で進みます。必要な用品は段階ごとに入れ替わります。

段階 犬の状態 主役になる用品
① ふらつき期 歩けるが滑る・つまずく・段差を嫌がる 滑り止めマット、段差スロープ、食器台
② 歩行介助期 支えがあれば歩ける・立ち上がりが困難 歩行補助ハーネス、靴下、ペットカート
③ 寝たきり期 自力で立てない・寝返りが打てない 体圧分散マット、オムツ、シリンジ、清拭用品

先の段階の用品を前もって買うのはおすすめしません。理由は単純で、ハーネスもオムツもマットも、そのときの体格・症状・寝姿勢に合わせて選ぶ物だからです。ふらつき期に買った介護用品が、寝たきり期にサイズや形で合わなくなる例はよくあります。

もうひとつ、選ぶ軸になるのが施設の料金表です。当サイトの調査では、料金を公表している施設の中に、介護の「手間」そのものに料金をつける例が複数ありました。

  • 食事介助・オムツ交換・清拭・服薬介助に+500円の介護費、認知症対応に+300円を設定(北九州市の施設)
  • 排泄補助550円/回、インスリン投与550円/回、点滴1,100円/回と行為単位で設定(神奈川県平塚市の施設)
  • 寝たきり・床ずれ管理を最重度区分(1泊+9,900円)に設定(大阪府枚方市の施設)

プロが料金をつける行為は、そのまま家庭で毎日発生する手間のリストです。介護用品は「かわいそうだから買う物」ではなく、この手間のどれを道具で軽くするかで選んでください。

足腰・歩行のサポート用品【ふらつき期〜歩行介助期】

最初の一歩はハーネスではなく「滑らない床」

フローリングで足が滑ると、老犬は立ち上がりのたびに体力を消耗し、転倒や関節の悪化につながります。ふらつきに気づいたら、まず犬の生活動線に滑り止めマットやタイルカーペットを敷くのが、費用対効果が最も高い最初の対策です。あわせて、よく乗り降りするソファやベッドには段差スロープかステップを。飛び降りの着地は前足に強い衝撃がかかります。

→ 関連記事:老犬が立てなくなったら|留守番と預け先、夜間の受診費の実測

歩行補助ハーネスの選び方。5つのチェックポイント

支えがあれば歩ける段階の主役です。次の5点を順に確認してください。

  1. 支える部位:後ろ足の弱りには後足用(腰を吊り上げるタイプ)、前足や全身のふらつきには胴体ごと支えるタイプ。前後とも弱ってきたら全身を支えるフルボディタイプに、寝たきりに近づいたら装着したまま眠れてオムツ交換もできる形状に移行します
  2. 首に負荷をかけない形か:散歩用の首輪感覚で選ぶと失敗します。老犬は気管が弱っていることがあり、首まわりに力がかかる形は咳やむせの引き金になります。胸と胴で体重を受ける設計を選んでください
  3. サイズ:胴回り・腰回り・体重を測って適合表と照合します。介護ハーネスは体重を預ける道具なので、サイズが合わないと皮膚の擦れや姿勢の崩れにつながります。ダックスフンドなどの胴長犬種は、胴の一点でなく広い面でホールドする形が向きます
  4. 装着したまま排泄できるか:介護ハーネスは散歩のたびに着脱しない前提の道具です。排泄口が確保された設計かは重要な分かれ目で、メーカーも仕様に明記しています。実例では、ペティオの「zuttone 老犬介護用 歩行補助ハーネス」が「装着したままでもオス・メス共に排せつ可能」を公式仕様に掲げています。価格は後足用Mサイズ(体重7kgまで・腰回り35〜45cm)で税込3,828円です(2026年8月時点のメーカー公式情報)
  5. 素材と留め具:長時間つけるなら通気性のよいメッシュ素材が基本です。長毛種は面ファスナーが毛を巻き込みやすいので、バックル併用の物を。持ち手にクッションがあると支える側の手も守れます。持ち手の長さは、散歩用なら立ったまま支えられる長め、室内や段差の補助なら短めが扱いやすい長さです

買う前に、バスタオルをお腹の下に通して両端を持ち上げる方法で数日試してください。タオル介助で歩行が安定するなら、ハーネスは有効な投資です。嫌がって暴れる・痛がる場合は、痛みの原因が隠れていることがあるため先に受診を。

靴下・車椅子は「様子見で買わない」用品

滑り止め付きの靴下は、足先の擦り傷防止や踏ん張りの補助になりますが、嫌がって脱ぐ犬も多く、履かせたままだと蒸れます。試すなら短時間から。犬用車椅子は体格・症状への適合が難しい用品で、扱いは別格です。次の章で詳しく解説します。

老犬の車椅子。「歩けなくなってから」ではなく「歩けるうちに」相談する

犬用車椅子(歩行器)は、弱った後ろ足を車輪で支えて自力で動ける時間を延ばす道具です。誤解されがちですが、出番は「完全に歩けなくなってから」ではありません。後ろ足のふらつきが進んできた段階で相談するほうが、体力のあるうちに乗り方に慣れやすいとされます。

タイプは大きく2つ。後ろ足だけを支える2輪タイプと、前足も弱ってきた犬の全身を支える4輪タイプです。どちらも採寸と体格・症状への適合がすべてで、合わない車椅子は「使われないまま終わる用品」の筆頭でもあります。自己判断で購入せず、かかりつけの動物病院やリハビリ経験のある施設に相談し、できれば購入前にレンタルで試してください。

当サイトの実測では、大阪市の施設が実際に犬に使いながら改良した3輪の介護用車椅子を開発し、販売とレンタルの両方を提供しています。乗ったまま飲食・排泄ができる設計で、同じ施設は寝たきりの犬も車椅子で運動・リハビリ・散歩に連れ出すと明記しています。車椅子は「歩行の道具」であると同時に、寝たきり期でも体を起こして外に出るための運動の道具だということです。

なお、塩ビパイプなどで自作する「作り方」も検索すると出てきますが、体重のかかり方や擦れの調整が難しく、合わない自作品はかえって犬の負担になります。体重がかかる道具は専用品が安全という原則は車椅子でも同じです。後ろ足の筋力を保つ室内運動や、車椅子・カートを使った散歩の続け方は、こちらの記事にまとめています。

→ 老犬の散歩はどうする?歩かない・行きたがらないときの対処と、やめる前にできること【実測データ】

食事・水分・投薬のサポート用品

食器台は「首を下げさせない」ための基本装備

首を下げた姿勢での食事は、老犬には負担が大きく、むせる原因にもなります。食器を口の高さまで上げる食器台(または台の代用になる箱)が、食事サポートの基本装備です。

食が細くなってきたら、フードをふやかすためのぬるま湯、とろみ剤、流動食用のミキサーが加わります。自力で食べられなくなった段階では、シリンジ(針のない注射器型の給餌器)で少量ずつ流し込む介助に移りますが、寝たままの給餌は誤嚥(気管に入ること)の危険があります。上体を起こした姿勢で、少量ずつ。むせる・食後にゼコゼコいう場合は必ず受診してください。

投薬グッズは「砕いていい薬か」の確認とセットで

錠剤を砕くピルクラッシャーや、薬を包む投薬補助のおやつは、毎日の服薬介助を楽にします。ただし、薬には砕いてはいけない種類があります(ゆっくり溶けるよう設計された薬など)。砕く・カプセルを開ける・食事に混ぜるの可否は、処方時にかかりつけの獣医師に確認してからにしてください。

寝床・床ずれ対策の用品【寝たきり期の主役】

体圧分散マットは「通気・洗える・厚み・大きさ」で選ぶ

寝たきり期の投資で最優先すべきはマットです。当サイトの調査でも、施設は床ずれ管理を介護の最重度区分に置いていました(寝たきり・床ずれ管理で1泊+9,900円の加算例)。プロが最も重い手間として扱う項目を、家庭で軽くできる道具がマットです。

選ぶ基準は4つ。①通気がよい ②丸洗いか、カバーを洗える ③体が沈み込みすぎない厚み ④体より一回り大きいサイズです。高反発と低反発のどちらが合うかは犬の体格・状態で変わるため、迷ったらかかりつけに相談してください。介護用品メーカーは老犬専用の寝床も展開しており、実例ではペティオの「zuttone 老犬介護用 床ずれ予防ベッド」が小型犬用から大型犬用(税込23,980円)までをそろえています(2026年8月時点のメーカー公式情報)。専用ベッドは高額なので、まず手持ちのマットとクッションで姿勢を作り、寝たきりが長期化する見通しになってから投資する順番で構いません。

頬・肩・腰・かかとなど骨の出た部位には、支えるクッションや、足に巻く床ずれ予防サポーターがあると姿勢づくりが楽になります。マットを整えても、体位変換(おおむね2〜3時間おきが目安。適切な間隔はかかりつけと確認)は必要です。毎日のチェックポイントと楽な姿勢の作り方は、寝たきり介護の記事で手順として解説しています。

→ 関連記事:老犬が寝たきりになったら。自宅ケアの基本と、限界が来る前に知る預け先【実測データ】

→ 関連記事:犬の床ずれ|65施設の実測でわかった「2時間おき」の現実と費用

排泄ケアの用品。オムツ代の実測月額

オムツはサイズと交換頻度がすべて

犬用オムツは腰回りのサイズで選び、こまめな交換で皮膚のかぶれを防ぐのが基本です。夜間や長めの外出には、吸収量の多い長時間タイプ(ユニ・チャームの「マナーウェア 長時間快適オムツ」はSSSサイズから大型犬用まで、男の子用・女の子用・男女共用を展開)という選択肢もあります。人用オムツにしっぽ穴を開けて使う工夫も広く行われていますが、体格に合わないと漏れ・擦れの原因になるため、まず犬用のサイズ表で合う物を探すのが確実です。使い捨てのペットシーツ、防水シーツ、おしり周りの部分洗い用品(洗い流さないシャンプー・ウェットシート)をセットで揃えると、清潔管理が回り始めます。

消耗品の月額は3,300〜5,500円が実測の目安

「オムツ代って月いくらかかるの?」への、施設の実データがあります。千葉県の老犬ホームは、介護が必要な犬のオムツ・ペットシーツ代の実費を小・中型犬3,300円/月、大型犬5,500円/月と公表しています。毎日オムツとシーツを消費する施設の実測値なので、在宅介護の消耗品予算の目安に使えます。かぶれ・赤みが出たら、市販薬で対処せず動物病院へ。

サイズの測り方、漏れないテープの留め方、嫌がるときの切り分け、人用おむつが本当に安いのかは、おむつだけを扱った記事にまとめました。

→ 関連記事:老犬のおむつ|嫌がる理由の見分け方と、漏らさない選び方【11製品を実測】

移動・環境づくりの用品

ペットカートは「散歩をあきらめない」ための道具

歩けなくなっても、外の空気と日光は老犬の生活リズムを保つ材料になります。ペットカートがあれば通院の負担も減り、日中に刺激を与えることで昼夜のリズムが整う一助にもなります。夜泣きの対策としても日中の過ごし方は重要です。

→ 関連記事:老犬の夜泣きが止まらない。原因の切り分けと、飼い主の睡眠を守る現実的な方法

認知症の犬には「ぶつかっても安全な囲い」

認知症でぐるぐる歩き続ける・狭い所に入って後退できなくなる犬には、円形に組めるサークルや、家具の角を覆うクッション材(ごっつん防止グッズ)で、ぶつかっても怪我をしない動き回れる空間を作ります。囲いに入れることに罪悪感を持つ飼い主さんは多いのですが、目を離した隙の事故(転落・挟まり)を防ぐ安全装備です。

酸素室(酸素ハウス)はレンタルで導入する

心臓や呼吸器の病気がある老犬に、獣医師から在宅酸素を勧められることがあります。酸素発生器とケージを組み合わせた「酸素室」は購入すると高額な設備で、レンタル提供する事業者が複数あります。介護の期間は読めないので、初期費用を抑えて始められるレンタルから検討するのが合理的です。

なお、施設で見かける「酸素カプセル」(大阪市の老犬ホームが15分1,650円のオプションとして提供)は短時間入る筒型の設備で、ケージ内の酸素濃度を高めて長時間過ごす在宅の酸素室とは別物です。共通しているのは、酸素がプロの現場でも課金・管理される専門ケアの領域だということ。「呼吸が苦しそうだから」と自己判断で導入せず、必ず獣医師の指示のもとで使ってください。導入すべきか、どう使うかは診察なしに決められません。

→ 関連記事:犬の酸素室レンタル8社の料金を実測比較|安さより先に見るべきは解約条件

体を清潔に保つ道具(ドライシャンプー・蒸しタオル)の使い分けは、洗い方とセットでこちらにまとめています。

→ 老犬のシャンプーはどうする?負担を減らす洗い方と、洗えない日の代替ケア【実測データ】

買わなくていいもの・代用できるもの

介護用品は「専用品でなくても回る物」がかなりあります。限られた予算は、マットとオムツという毎日消耗する主役に回してください。

  • 歩行介助の初期:バスタオルで代用できます(お腹の下に通して持ち上げる)。数日試してからハーネスを買う方が、サイズ選びも確実です
  • 食器台:安定した箱や雑誌の束で高さは作れます。専用品の利点は洗いやすさと角度調整
  • 体位変換のクッション:専用クッションでなくても、家にあるクッションや丸めたタオルケットで隙間は埋められます
  • 先回りの買いだめ:オムツのサイズは体重の変化で変わります。まとめ買いは現在のサイズが安定してから
  • 効果をうたうグッズ類:夜泣きや認知症に「効果がある」とされる雑貨・民間グッズは、買う前にかかりつけに相談を。原因の切り分けが先です

介護用品にいくらかかるか。そして道具にできないこと

段階別に、費用の目安をまとめます。金額はメーカー公式価格の実例と施設実測値、それ以外は概算です。

段階 初期費用の目安 毎月かかる費用
① ふらつき期 滑り止めマット・食器台で数千円 ほぼなし
② 歩行介助期 ハーネス3,000〜4,000円前後(公式価格の実例=税込3,828円)+カートを足すなら1万円台〜 ほぼなし
③ 寝たきり期 クッション・シリンジ・防水シーツで数千円〜。専用ベッドに投資するなら1万〜2万円台(公式価格の実例=大型犬用23,980円) オムツ・シーツ代3,300〜5,500円(施設実測)+通院費

一方、老犬ホームに任せる場合の基本月額は小型犬5.5万〜11万円が中心で、要介護の犬はここに介護度加算(実測で月2.75万〜18万円)が乗ります。金額だけならば、在宅がはるかに安く済みます。なお施設に預けた場合でも、オムツ代・フード代は飼い主負担という施設が実測で複数ありました(岐阜県の施設は食事代・オムツ代を月額に含まないと明記、三重県の施設はフード持参制)。用品選びの知識は、在宅でも預けても無駄になりません。

ただし、道具が軽くできるのは「手間」だけです。2〜3時間おきの体位変換や夜間の見守りという「時間」は、どんな用品でも作れません。装備を揃えても人手が足りなくなってきたら、それは用品の問題ではなく体制の問題です。1泊4,000円台からの短期預かりで眠れる日を作る選択肢を、限界が来る前に押さえておいてください。

→ 関連記事:老犬の短期預かりはどこに頼む?1泊からの預け先4つと料金実測データ

→ 施設に任せる場合の費用は:老犬ホームの料金相場はいくら?全国48施設の実測データで解説【2026年版】

老犬の介護用品でよくある質問

Q. 犬の介護に介護保険は使えますか?

使えません。人の公的介護保険に相当する制度は犬にはなく、介護用品は全額自己負担です。ペット保険も、治療費が対象で介護用品は対象外の商品が一般的です(補償範囲は約款で確認してください)。

Q. 介護用品はレンタルできますか?

酸素室(酸素発生器)はレンタル提供する事業者が複数あります。犬用車椅子やペットカートにもレンタルやオーダー前の試用を提供する事業者があります。使用期間が読めない高額な用品ほど、購入前にレンタルの選択肢を確認する価値があります。

Q. どこで買うのがいいですか?

品揃えはECサイトが最も充実しています。ただしハーネスやオムツなどサイズ適合が重要な用品は、採寸してサイズ表と照合してから注文してください。動物病院で扱いのある用品(介護食・とろみ剤など)は、診察のついでに相談すると犬の状態に合わせた選択ができます。

Q. 手作りやDIYでも大丈夫ですか?

食器台やクッションのような「高さや隙間を作る物」は手作りで十分です。一方、歩行ハーネスのように体重がかかる道具の常用は、縫製や強度の点で市販の専用品が安全です。タオル介助はあくまで試用・短時間の補助と考えてください。


介護用品は、揃えることが目的ではありません。今の段階の手間をどれだけ軽くできるかが全てです。まず滑らない床と食器の高さから始めて、段階が進むごとに主役を入れ替えていく。そして道具で買えない「時間」は、短期預かりという道具の外にある選択肢で確保してください。

調査・執筆:老犬ホームナビ編集部(運営者:成田 風輝)。本文中の施設の料金・介護加算は、全国の老犬ホーム・老猫ホーム120施設の公式サイトを1施設ずつ確認した当サイトの調査に基づきます(調査日:2026年8月17〜18日)。商品の価格・仕様は2026年8月時点の各メーカー公式サイトの公表情報です。介護用品の選び方は一般的な情報であり、個別の犬への適否はかかりつけの動物病院にご相談ください。詳細は運営者情報をご覧ください。