老犬が寝たきりになったら。自宅ケアの基本と、限界が来る前に知る預け先【実測データ】

愛犬が自力で立てなくなった日から、介護は別の段階に入ります。体位変換、食事の介助、排泄のケア、そして夜間の見守り。ここから必要になるのは「頑張り方」ではなく、続けられる体制です。

この記事では、寝たきり介護の基本を簡潔に整理したうえで、多くの記事が書いていないこと——寝たきりの犬の預け先の現実——を、当サイトの全国120施設調査のデータで解説します。ケアの細かい技術はかかりつけの動物病院の指導が最優先です。この記事は、その外側にある「体制と費用」を担当します。

立てなくなったのが今日・昨日なら、先にこちらをお読みください。受診の判断、夜間にかかる費用、日中の留守番と預け先を実測でまとめています。

→ 関連記事:老犬が立てなくなったら|留守番と預け先、夜間の受診費の実測

寝たきりになったら、最初に整える3つのこと

  1. 動物病院で「ケアの設計図」をもらう:寝たきりの原因、痛みの有無、食事の形態、体位変換の頻度は犬ごとに違います。自己流で始める前に、かかりつけで介護の指導を受けてください。今後の見通しを聞いておくことは、後の判断すべての土台になります
  2. 寝床を作り直す:体圧が分散されるマット(通気がよく、洗えて、適度な厚みがあり、体より一回り大きいもの)と、洗い替えできる敷物。高反発か低反発かは犬の状態で向き不向きがあるため、迷ったらかかりつけに相談を。寝床の適温管理(夏の熱こもり・冬の冷え)も床ずれと同じくらい重要です
  3. 介護の「持ち場」を決める:誰が朝・昼・夜を見るのか。ひとりで全部を担う設計は、この段階では成立しません。家族での分担、後述の外部サービスまで含めて最初に決めてください

毎日のケアの基本

いずれも一般的な整理です。頻度ややり方は犬の状態で変わるため、かかりつけの指導を優先してください。

  • 体位変換:同じ向きで寝続けると、骨の出た部分(頬・肩・腰・かかと)の血流が滞り床ずれになります。おおむね2〜3時間おきの向き替えが目安とされますが、適切な間隔は犬の状態や体圧分散マットの有無で変わるため、かかりつけの動物病院に確認してください
  • 床ずれチェック:毎日、骨の出た部分の皮膚を見る。赤み・脱毛・湿りは初期サインなので、見つけたら自己処置の前に動物病院へ
  • 食事と水:寝たままの給餌は誤嚥(食べ物や水が気管に入ること)の危険があります。クッションなどで上体を起こした姿勢を作り、少量ずつ、飲み込んだのを確認しながら与えてください。食器を口の高さまで持ち上げる、フードをふやかす・とろみをつけるなどの工夫で食べやすくなる犬もいます。自力で食べられるうちは、介助しすぎず自分で食べさせることも機能の維持につながります。むせる・食後にゼコゼコいう場合は必ず受診を
  • 体を固まらせない:拘縮(関節が固まること)の予防に、マッサージや関節の曲げ伸ばしが勧められることがあります。ただしやり方を誤ると負担になるため、かかりつけで指導を受けてから行ってください
  • 排泄と清潔:オムツやシーツはこまめに替え、皮膚のかぶれを防ぎます。お尻まわりの毛を短くしておくと清潔を保ちやすくなります。全身シャンプーより、汚れた部分をぬるま湯や体拭きで洗う部分ケアが基本です。排尿・排便がうまくできない場合の圧迫排尿・排便介助は、自己流では絶対に行わず、必要かどうかの判断も含めて獣医師の指導を受けてください

体位変換の頻度については、老犬ホーム65施設を実測したところ「2時間おき」を自施設の運用として約束していた施設はありませんでした。回せないときにどうするかを、施設の実測と費用からまとめています。

→ 関連記事:犬の床ずれ|65施設の実測でわかった「2時間おき」の現実と費用

→ 関連記事:老犬のおむつ|嫌がる理由の見分け方と、漏らさない選び方【11製品を実測】

すぐ動物病院に連絡すべきサイン

次のいずれかがあれば、様子見をせずかかりつけ(夜間なら救急)に連絡してください。

  • 呼吸が荒い・苦しそうな呼吸が続く
  • 呼びかけへの反応が極端に鈍い・ぐったりしている
  • 丸1日、食べない・水を飲まない
  • 尿が半日以上出ていない
  • けいれんを起こした

「楽な姿勢」の作り方

寝たきりの犬に一般的に楽とされるのは、呼吸がしやすい横向きです。ただし、心臓や呼吸器の病気がある犬、痛む部位や床ずれのある犬では楽な姿勢が変わります。持病のある犬は、どの姿勢を基本にするかを先にかかりつけの動物病院で確認してください。そのうえで、ポイントは体の隙間をクッションで埋めて、圧を一点に集中させないことです。

  • 頭の下に薄いタオルやクッションを敷き、首が反ったり落ちたりしない高さに。顎を軽く乗せられると呼吸が楽になります
  • 背中側に丸めた毛布やクッションを当てると、姿勢が安定して犬が力を抜けます
  • 前脚・後脚の間にクッションを挟むと、脚同士が重なって圧迫されるのを防げます
  • 床に当たる頬・肩・腰・かかとの下は、体圧が分散されるマットで受けます

自力で伏せができる犬なら、クッションで胸を支えた伏せに近い姿勢を日中に取らせると、周りが見えて刺激にもなります。ただし呼吸や首に不安のある犬には合わないことがあるため、短時間から様子を見て、無理をさせないでください。

寝返り(左右の入れ替え)にも注意点があります。仰向けのまま反対側へごろんと反転させる方法は体への負担が大きいとされるため、肩と腰を支えて一度上体を起こし気味にしてから、反対側へゆっくり倒すのが基本です。初めての場合は、かかりつけの動物病院で一度やり方を見せてもらうのが確実です。

注意すべきは姿勢そのものより変化です。横向きで呼吸が乱れる、伏せの姿勢を嫌がる、特定の向きだと鳴く。こうした変化は痛みや内臓・呼吸の不調が隠れていることがあるため、姿勢の工夫でしのがず動物病院に相談してください。

飼い主の体を守ることも介護のうち

寝たきり介護で最初に壊れやすいのは、犬ではなく飼い主の腰と睡眠です。

  • 抱き上げは道具で:介護ハーネスやバスタオルを使い、素手で繰り返し抱き上げない
  • ケアの高さを上げる:床での介護は腰を消耗します。可能なら台や低いベッドの高さで
  • 夜間の分担と引き継ぎを決める:数時間おきの体位変換が続く前提で、家族で夜間の担当を分けます。交代時には「最後の体位変換の時刻・食べた量・気になった様子」を1行のメモで引き継ぐと、担当でない日は本当に休めます

介護がひとりに集中している場合は、次の預け先の情報を「まだ使わないとしても」読んでおいてください。限界が来てから調べるのでは遅いからです。

寝たきりの犬の預け先。実測で分かった現実

当サイトは全国の老犬ホーム・老猫ホーム120施設を調査し、一覧化しています。料金を実測できたのは48施設で、残りは料金非公開または公式サイトのない施設です。その中で分かった、寝たきりの犬の預け先の実態です。

1. 受け入れる施設には「値段」がついています。料金を確認できた48施設のうち、介護の重度区分や24時間観察の加算を料金表に明示する施設が複数ありました。

  • 寝たきり・痙攣など24時間の観察が必要な犬の預かりを、1泊5,500円を上限とする介護料金として明示(仙台市の施設)
  • 寝たきり・床ずれ管理を介護の最重度区分(1泊+9,900円)に明記(大阪府の施設)
  • 全介助の犬に1泊+1,100円の加算(山口市の施設)。月額では重度加算が月+18万円の施設(東京都)から加算なし・介護込み月額の施設(新潟市)まで

2. 一方で、寝たきりの犬を受け入れない施設も実在します。歩行・採食・排泄が自力でできない犬は入所できないと明記する施設がありました。寝たきりになってから探し始めると、選択肢が狭い地域では行き先がないこともあります。

3. だから、預ける予定がなくても「候補と料金」だけは先に押さえておくべきです。短期預かり(1泊4,000〜13,000円が実勢・重度は加算あり)で試しておけば、あなたが倒れたときの緊急避難先にもなります。

→ 施設ごとの料金は:全国の老犬ホーム一覧【120施設・料金実測つき】

→ 預け方の手順は:老犬の短期預かりはどこに頼む?1泊からの預け先4つと料金実測データ

在宅と施設、費用はどう違うか

在宅の寝たきり介護にかかるのは、用品(マット・オムツ・シーツ)と通院費です(こちらは施設料金のような実測はしていませんが、目安として月数千円〜数万円)。施設に任せる場合は小型犬で月5.5万〜11万円が中心で、寝たきりの犬は介護加算が乗ります。金額だけ見れば在宅が安いのは当然ですが、在宅の費用にはあなたの睡眠と体力が計上されていません。介護のために仕事を減らす・体を壊すところまで含めて比べてください。内訳はこちらで実測しています。

→ 老犬ホームの料金相場はいくら?全国48施設の実測データで解説【2026年版】

寝たきり介護でよくある質問

Q. 寝たきりになったら余命はどのくらいですか?

寝たきりという状態だけで余命は判断できません。原因(関節・神経・内臓・老衰)によってまったく違うため、かかりつけの獣医師に見通しを聞くのが唯一の確実な方法です。見通しを知ることは、介護体制と費用の計画に直結します。老衰が近づいたときのサインと看取りの準備は、犬の老衰のサインと看取りの準備。自宅・病院・施設それぞれの選択【実測データ】にまとめています。

Q. 寝たきりから回復することはありますか?

原因によります。痛みの治療やリハビリで立てるようになる犬もいれば、老衰による寝たきりもあります。自己判断で「もう年だから」と決めず、まず動物病院で原因を確認してください。

Q. 夜中に手足をバタバタさせて鳴くときは?

不快(姿勢・排泄・空腹)のサインのことも、痛みや発作のこともあります。呼びかけへの反応がない・けいれんを伴う場合はすぐ動物病院へ連絡を。判断に迷う様子は動画に撮っておくと、受診時に正確に伝わります。

Q. 介護はどのくらいの期間続きますか?

数週間から年単位まで、幅がありすぎて目安を示せません。だからこそ「全部自分で・無期限に」という設計ではなく、分担と外部サービスを組み込んだ体制で始めてください。


寝たきり介護で最優先すべきことをひとつ挙げるなら、あなたが倒れない体制を先に作ることです。ケアの技術はかかりつけと一緒に整えられます。体制だけは、あなたにしか作れません。

調査・執筆:老犬ホームナビ編集部(運営者:成田 風輝)。本文中の施設の対応・料金は、全国の老犬ホーム・老猫ホーム120施設の公式サイトを1施設ずつ確認した当サイトの調査に基づきます(調査日:2026年8月17〜18日)。ケアの方法は一般的な情報であり、個別の診断・治療・介護指導はかかりつけの動物病院にご相談ください。詳細は運営者情報をご覧ください。