老犬が立てなくなったら|留守番と預け先、夜間の受診費の実測

老犬が立てなくなると、その日から生活が変わります。仕事に行くあいだどうするのか、夜に病院へ行くといくらかかるのか、預けられる場所はあるのか。

この記事では、動物病院23施設の夜間料金と老犬ホーム55施設の受け入れ条件を実測して、その3つに答えます。原因や治療については書きません。当サイトは獣医師の監修を受けていないので、そこは診察した獣医師の領域です。

【結論】

  • 急に立てなくなったなら、今日中に受診。費用を理由に先延ばしにしない
  • 夜間の診察料は8,000〜11,000円。歩行異常での受診は病院公表で25,000〜45,000円という例がある
  • ペット保険は5社中4社が時間外加算を補償対象外
  • 歩けなくなっても預け先はある。55施設のうち37施設(67.3%)が受け入れると明記していて、断る理由の1位は歩行不能ではなく攻撃性(17施設)
  • ただし料金表に重度の区分があること=受け入れ確約ではない
  • 日中だけ預けるデイケアは、実測した施設で1回2,000〜6,000円

まず、「急に」か「徐々に」かを分ける

同じ「立てない」でも、進み方によってやることがまったく違います。

昨日まで歩いていたのに急に立てなくなった場合は、今日中に動物病院に連れて行ってください。動物病院が運営しているサイトは、そろってこの原則を書いています。アニホック小平(アニホック動物病院グループ)のページは、すぐ受診すべき状況として「突然立てない」「激しい痛みがある」「排尿・排便ができない」などを挙げています。日本小動物外科専門医が監修するとがさき動物病院のページも、加齢による変化の裏に別の原因が隠れている可能性に触れています。

当サイトは原因を書きません。症状の見た目から絞り込むことは、獣医師の監修を受けていない私たちにはできないからです。「この症状ならこの病気」「これなら様子を見てもいい」という判断は、診察した獣医師にしか出せません。迷ったら受診してください。

徐々に弱ってきた場合は、時間があります。滑らない床にする、段差を減らす、寝床の位置を変える。歩行を補助する道具も、まだ歩けるうちに試しておくほうが犬も慣れます。

→ 関連記事:老犬の介護用品はどれから揃える?段階別の必要リストと費用の実測データ

受診するときの持ち物と段取り

受診を決めたあとの実務です。これは獣医師の領域ではなく、飼い主の段取りの話なので、具体的に書きます。

症状の動画を撮ってから行く

主KWで1位のノヤ動物病院は、診察中は症状が出にくいので、スマホで動画を撮ってきてほしいと案内しています。歩き方、立ち上がろうとする様子、ふらつく向き。病院に着くと緊張して普段と違う動きになることがあるので、家での様子が残っていると診察が早く進みます。

持っていくもの

  • 現金3万円程度とクレジットカードの両方(後述しますが、支払い方法が病院によって正反対です)
  • お薬手帳、いま飲んでいる薬そのもの
  • 直近の血液検査の結果があれば
  • ペット保険の証券

電話で伝えること

診断は病院の仕事です。飼い主にできるのは、見たことを正確に伝えることまでです。

  • いつからか(今朝からか、数日前からか、だんだんか)
  • どこが立たないか(後ろ足だけか、四本ともか、片側だけか)
  • 立てないのか、立てるが歩けないのか
  • 一緒に起きていること(食べない、吐いた、失禁した、鳴く、痛がる)
  • 持病と、いま飲んでいる薬

運び方

アニホック小平のページは、立てない犬を運ぶときに体をひねらないよう、板やバスタオルで体全体を支える方法を案内しています。体の下に差し込んで、そのまま持ち上げる形です。

抱き上げると背中が丸まったり、体がねじれたりします。どこに問題があるか分からない段階では、体の一部だけを持ち上げるのは避けてください。体が大きい犬ほど一人で支えるのは難しいので、運ぶ前に人を呼べるなら呼んでください。タオルを体の下に通しておくと持ち手ができます。

夜間・休日にかかりつけが閉まっているとき

かかりつけの留守番電話に、夜間救急の案内が入っていることがあります。地域の獣医師会が夜間の受け入れ先を案内している場合もあります。

そして料金は電話で聞いて構いません。実測したところ、夜間救急を掲げている施設の約4割は料金を公開していませんでした。行く前に確認してください。

【実測】夜間に受診すると、いくらかかるか

先に書いておきます。費用を理由に受診を先延ばしにしないでください。この章は、覚悟を決めて出かけるための情報です。

動物病院23施設の公式料金表を実測しました(2026年8月19日時点)。

診察料と検査費用

金額の幅 中央値 n
一般の動物病院の時間外加算(通常の診察料への上乗せ) 1,100〜11,000円 9,000円 6
夜間救急専門病院の夜間診察料(これ1本で発生) 8,000〜11,000円 9,400円 16
血液検査 9,900〜25,000円 12,500円 —
レントゲン 6,600〜10,000円 8,250円 —
エコー 3,900〜10,000円 5,250円 —

レントゲンは日中の一般的な料金の約1.9倍でした。

歩行異常での受診は、病院公表で25,000〜45,000円

より近い数字もあります。症状別の目安を公表している夜間救急病院がありました。

病院 症状 公表している目安
京浜夜間動物病院 跛行(歩行異常) 25,000〜45,000円(税込)
夜間救急動物病院-目黒 神経の病気 50,000円〜(診察・検査・入院治療費込み)
久喜夜間救急どうぶつ病院 けいれん 38,500円〜(入院する場合は110,000円〜)

これは病院自身が公表している金額で、当サイトの試算ではありません。何が必要になるかは診察しないと決まりませんが、数万円は用意して出かけるのが現実的です。

「夜になってから」では、もう加算が始まっている

加算が何時から始まるかも数えました。21施設のうち18施設(約86%)が、18時45分から21時台のあいだに加算を開始しています。22時以降に開始する病院は1施設だけでした。

さらに極端な例があります。水戸のフレンドアニマルメディカルセンターは、20時00分〜20時29分が1,500円、21時00分〜21時59分が9,000円。1時間ためらうだけで6倍になります。同院はかかりつけと予防接種の割引を組み合わせると9,000円が3,000円になる(約67%引き)とも公表していて、普段から通っている病院があることは夜間の費用にも関わってきます(函館のオオツ動物病院も、救急料金をかかりつけ5,000円〜/それ以外10,000円〜と分けています)。

夕方に様子がおかしいと気づいたなら、明るいうちに電話をするほうが安く済みます。

ペット保険は、夜間の加算に使えないことが多い

ペット保険5社の公式情報を確認したところ、4社が時間外の加算を補償の対象外にしていました。

会社 時間外加算の扱い
アニコム損保 対象外「時間外診療費として、診療費等に加算された料金は補償の対象外となります」
アイペット損保 対象外「診察加算料となるため補償対象外。それ以外の初診料、再診料等の基本診察料は補償の対象」
ペット&ファミリー損保 対象外
リトルファミリー少額短期保険 対象外
SBIプリズム少額短期保険 対象「夜間診療費、時間外診療費、休日診療費等…補償の対象となります」

「基本の診察料は出ます」と書いている会社もあります。ただし夜間救急の専門病院では、その”診察料”そのものが8,000〜11,000円の夜間診察料として1本で請求されます。ペット&ファミリー損保は「夜間専門病院で発生する時間外の特別料金(初診料・再診料・診察料は時間外料金とみなします)は補償対象外」と明記していました。「基本診察料は補償される」という説明が、夜間救急専門病院では成立しない場合があるということです。

なお支払い方法は、現金のみの病院とキャッシュレスのみの病院の両方がありました。だから現金とカードの両方を持っていってください。

今日できる環境の調整

診断を待つあいだにも、できることがあります。どれもお金をかけずに今日できることです。

床を滑らなくする:フローリングは、足腰が弱った犬にとって滑る床です。ヨガマット、カーペット、タイルマットなどを、犬がよく通る動線に敷いてください。滑る床のままだと、踏ん張れずにさらに立てなくなります。

段差をなくす:数センチの段差でも、後ろ足が上がらない犬にはつまずく原因になります。ソファやベッドからの落下は、状態を悪くします。

寝床とトイレ、水を近づける:移動そのものが難しくなっているので、動く距離を短くします。水は倒れにくい容器にして、届く高さに置いてください。

角と固いものを覆う:ふらついて壁や家具にぶつかることがあります。よくぶつかる場所にクッション材を当てておくと安全です。

立てない犬の留守番をどうするか

仕事に行かなければならない、買い物に出なければならない。立てない犬をひとりにする時間をどうするかは、すぐに直面する問題です。調べた範囲では、この点に答えているページはほとんどありませんでした。

現実的な選択肢は3つです。

1. 環境を作ってから出る

安全な囲いの中に寝床を作り、水とトイレを届く範囲に置きます。ぶつかっても怪我をしない広さに区切るのが基本です。動けない犬ほど、動こうとして事故が起きます。

2. 短時間で戻れる体制にする

家族と時間をずらす、昼に一度戻る、といった調整です。数時間ごとに人が入れば、排泄の処理と水の確認ができます。

3. 日中だけ預ける(デイケア)

老犬ホームやペットホテルには、日中だけ預かるサービスがあります。当サイトが実測した施設では、介護の度合いで料金を分けていて、1回2,000円(軽度)・4,000円(中度)・6,000円(重度)という設定でした。毎日使うと負担が大きいので、通院日や、どうしても長時間空ける日だけ使うという考え方が現実的です。

デイケアの料金と受け入れ条件は施設ごとに違うので、近隣の施設を複数当たってください。

→ 関連記事:全国の老犬ホーム一覧【120施設・料金実測つき】

【実測】歩けなくなっても、断られる理由は「歩けないこと」ではなかった

「立てなくなったら、もう預け先はないのでは」と考える人は多いと思います。当サイトもそう予想して実測しましたが、結果は逆でした。

老犬ホーム55施設の公式サイトから、歩けない犬・寝たきりの犬を受け入れるかどうかを調べました。

施設数
受け入れると明記 37(67.3%)
条件つき(状態次第で断る場合があると明記) 8(14.5%)
歩行不能を名指しで受け入れないと明記 1
実質的に不可(重度の医療ケアを除外) 1
記載なし 8

歩行不能を理由に断ると書いていた施設は、55施設のうち2つだけでした。では何で断られるのか。受け入れ条件を数えると、最も多かったのは人や他の犬への攻撃性・噛み癖で17施設、次いで感染症やノミダニが13施設です。預け先を失う理由は、歩けなくなることではありませんでした。

ただし、確認しておくべき点が2つあります。

1つ目は、料金表の区分と受け入れ可否は別だということ。香川のらんずケアは、料金ページで介護レベル3を「自立歩行ができない。食事や排泄の補助。月に4度以上の通院」と定義しながら、入居手続きのページにはこう書いています。

☑攻撃性が強く噛み付く癖がある
☑伝染病に感染している
☑介護レベルが高く寝たきりの状態である
☑その他当ホームがお預かり困難と判断した場合
これらの状況においては、お預かりをお断りすることがございますので、予めご了承ください。

寝たきりは、断る可能性がある4つの条件のうちのひとつとして挙げられています。料金表に重度の区分があることは、その状態の犬を必ず預かるという意味ではありません。問い合わせのときは「うちの子はこの状態ですが、預かってもらえますか」と、具体的な状態を伝えて確認してください。

2つ目は、要介護の加算です。金額を公表していた施設で見ると、月額7,000〜180,000円(中央値20,000円)、1泊あたりでは300〜9,900円(中央値2,000円)でした。一方で、加算をとらないと明記している施設も5つあり、札幌の逢犬はうすは車椅子まで無料で用意すると書いています。京都の老犬ホームあんは「ワンちゃんの状態によってお預かりをお断りする事はありません」と書き、追加費用も一切かからないとしています(月36,300円〜)。

なお、介護度の区分が何を指すのかまで書いていた施設は5つほどでした。同じ「重度」でも中身が違うので、加算の金額だけでなく、その区分の定義を確認してください。

→ 関連記事:老犬ホームの料金相場はいくら?全国48施設の実測データで解説【2026年版】

飼い主の体を守る

体重15kgの犬を1日に何度も持ち上げれば、腰を痛めます。これは根性の問題ではなく、物理の問題です。持ち上げるのではなく歩行補助のハーネスやタオルで体重の一部を受ける、寝床の高さと配置を変えて床から持ち上げる回数を減らす、大型犬は2人で。飼い主が倒れたら介護は止まります。

よくある質問

Q. 歩けないのに歩きたがります。止めるべきですか

止めるべきかどうかは犬の状態によって変わるので、かかりつけの獣医師に確認してください。そのうえで環境の面でできるのは、動こうとしたときに怪我をしない場所を作ることです。滑らない床、ぶつかっても痛くない囲い、落ちる段差をなくす。動きたい気持ちを止めるより、動いても安全な範囲を用意するほうが現実的です。なお京都の老犬ホームあんは、寝たきりの犬について「向きを変えると嫌がって暴れる…寝たきりで暴れると肩・股関節を中心に動かすので 結局 床ずれになってしまいます」と書いています。動くこと自体が体を傷めることもあるので、獣医師と相談しながら落としどころを決めてください。

Q. このまま寝たきりになったら、何が必要になりますか

体位変換、床ずれの予防、食事の介助、夜間の見守りが加わります。必要なのは頑張り方ではなく、続けられる体制です。

→ 関連記事:老犬が寝たきりになったら。自宅ケアの基本と、限界が来る前に知る預け先【実測データ】

→ 関連記事:犬の床ずれ|65施設の実測でわかった「2時間おき」の現実と費用

Q. 介護が続けられなくなりそうです

短期で預けて休む、日中だけデイケアを使う、長期で預ける。選択肢は残っています。

→ 関連記事:老犬の介護に疲れたら読んでほしい。限界サインと「休む」ための現実的な方法

まとめ

  • 急に立てなくなったなら今日中に受診。費用を理由に先延ばしにしない
  • 受診の前に症状の動画を撮る。現金とカードの両方を持っていく
  • 夜間の診察料は8,000〜11,000円、歩行異常での受診は病院公表で25,000〜45,000円という例がある
  • 加算は18時45分〜21時台に始まる病院が約86%。迷うほど高くなる
  • ペット保険は5社中4社が時間外加算を対象外
  • 歩けなくなっても預け先はある。断られる理由の1位は攻撃性で、歩行不能を挙げた施設は55のうち2つだけ
  • ただし料金表の区分と受け入れ可否は別。具体的な状態を伝えて確認する

立てなくなった日は、飼い主にとって区切りの日になります。でも、そこで選択肢がなくなるわけではありません。

調査・執筆:老犬ホームナビ編集部(運営者:成田 風輝)。動物病院23施設の公式料金表、ペット保険5社の公式情報、老犬ホーム55施設の公式サイトを2026年8月19日に確認して作成しました。当サイトは獣医師による監修を受けていません。病名の推定・治療・リハビリの手技には触れず、受診の判断は「迷ったら受診」に統一し、費用と施設の実測、環境の調整と段取りに限定しています。金額は改定されるため、受診前・申込前に各施設へご確認ください。