終身預かり(生涯預かり)は、愛犬の最期の看取りまで、世話のすべてを老犬ホームに任せる契約です。飼い主の入院や高齢化、介護の限界など、「もう自宅では看られない」ときの最終的な選択肢になります。
調査の概要:本記事の料金・契約条件は、全国の老犬ホーム・老猫ホーム120施設の公式サイトを1施設ずつ確認した当サイトの調査に基づきます(調査日=2026年8月17〜18日)。金額の税込・税別は各施設の表記に準拠しています。
ただし、この契約はほかのどの預け方よりも金額が大きく、施設ごとの条件差も極端です。当サイトの実測では、生涯分の一括料金は約47万円から1,700万円超まで開きがありました。同じ「終身」でも中身がまったく違うのです。この記事では、実測データをもとに、費用の実勢と契約前に必ず確認すべきポイントを解説します。
終身預かりとは。契約には2つの形がある
終身預かりは「看取りまで任せる」という点は共通ですが、法的な形は大きく2つに分かれます(施設側がどちらの形かを明示しているケースは少なく、契約前の確認が必須です)。
- 預かり型(所有権は飼い主のまま):長期預かりの延長で、犬の所有者は飼い主のまま。面会や中途解約の自由度が高い
- 譲渡型(譲受飼養=所有権が施設に移る):犬を法的に施設へ譲り渡す形。一般に、所有権の移転に伴って医療方針などの判断も施設側に委ねることになるとされます(委ねる範囲は個別の契約によります)。第一種動物取扱業の「譲受飼養」の登録を持つ事業者が行います
どちらの形かで、面会のしやすさ・医療方針の決定権・解約の可否が変わります。契約書で「所有権がどちらに残るか」を最初に確認してください。ここが曖昧なまま進めてはいけません。
終身預かりの費用相場【実測】
当サイトが料金を確認できた48施設のうち、終身(生涯)の料金を公表していたのは10施設でした。実勢は次のとおりです。
- 一括払いの中心帯:90万〜180万円台(小型犬)
- 下限の実例:飼育費47.5万円(ワンワン・パラダイス/愛知県新城市。満14歳以上限定。保証金・死亡時費用・予備費を含めた総額は約54.9万円)
- 上限の実例:1,747.5万円・税別(konomi動物病院/広島市東区。0歳の小型犬を終身で預ける場合。同じ施設でも15歳以上なら150万円・税別)
支払い方式も1つではありません。
| 方式 | 仕組み | 実例 |
|---|---|---|
| 生涯一括型 | 契約時に生涯分を支払う | 95万〜330万円の実例 |
| 期間更新型 | 6ヶ月ごとに更新して実質終身 | 6ヶ月契約を看取りまで更新 |
| 月額継続型 | 月払いのまま看取りまで | 月5.5万〜11万円が中心 |
| 年数一括型 | 数年分一括、以後無料 | 3年分一括・4年目以降は無料(ドッグハウスダディー西軽井沢/長野県)の実例 |
「終身=一括払い」とは限りません。月額のまま看取りまで対応する施設も実測で複数ありました(表の月額は48施設全体の相場です)。一括にこだわる必要はないのです。
入所年齢で総額が桁で変わる
終身一括の金額は、入所時の年齢で決まります。施設側は「あと何年預かることになるか」を年齢から見積もって価格を設定しているからです。
実測した施設の例(konomi動物病院・広島市東区)では、同じ小型犬でも15歳以上で入所すれば150万円、10歳なら582.5万円、0歳なら1,747.5万円(いずれも税別)という価格表がありました。逆に、満14歳以上に限定することで生涯の飼育費を47.5万円に抑えた施設(ワンワン・パラダイス)もあります。
「若いうちに終身契約して安心したい」は、この価格の仕組み上ほぼ成立しません。終身一括が現実的な選択肢になるのは、高齢期に入ってからです。それまでは月額や短期で付き合いながら、信頼できる施設を見極めるのが合理的です。
最大のリスクは「途中で亡くなったときの返金」
終身一括で最も確認すべきなのが、契約後まもなく愛犬が亡くなった場合にいくら戻るかです。実測した施設の返金規定は、設計がバラバラでした。
- 段階返金型:預かり開始から30日以内の死亡は90%返金、以後30日ごとに減額し、90日を超えると返金なし(老犬介護ホームろうたす/京都市伏見区)。30日以内70%〜90日以内50%という設計(老犬ホーム暖家/岐阜県揖斐川町)も
- 未償却返金型:入居一時金のうち経過期間分を差し引いて返金(東京ペットホーム/東京都大田区)
- 返金なし明文化型:「途中解約等による返金は行わない」と明記する施設(香川県の施設)も実在
そして、実測した48施設全体で見ると、返金条件を数値で公表している施設は約3分の1しかありません。公表していない施設が悪いとは限りませんが、契約書に返金条項が数値で書かれていない終身契約には、サインすべきではありません。
一括と月額、どちらが得か
単純な計算で目安が出せます。一括額 ÷ 月額 = 損益分岐の月数です。
例えば、月額7万円の施設で終身一括が150万円なら、分岐点は約21ヶ月。愛犬がそれより長く生きれば一括が割安、短ければ月額の方が安く済んだことになります。余命は誰にも分かりませんが、判断の目安は次のとおりです。
- 一括に向く:終身の対象年齢(10歳以上・満14歳以上など)の中では比較的若く、数年単位の預かりが見込まれる場合。また、飼い主側が「自分に万一があっても支払いが残らない」形にしたい場合。ただし入所年齢が若いほど一括額そのものが高く設定される点は前述のとおりです
- 月額に向く:高齢・闘病中で預かり期間が読めない場合。資金を手元に残したい場合
飼い主自身の入院や高齢化に備える目的なら、一括で「支払い済み」にしておく安心感には合理性があります。金額だけでなく、何のために終身にするのかで選んでください。
その施設は信用できるか。登録標識と自治体の名簿で確かめる
終身契約の相手が信頼できる事業者かどうかは、法律で用意された確認手段があります。
第一種動物取扱業者には、登録番号・氏名(法人名)・動物取扱責任者・登録年月日などを記した標識の掲示が法律で義務付けられています。見学時に施設内の標識を確認し、預かりなら「保管」、終身(所有権移転あり)なら「譲受飼養」の登録があるかを見てください。登録の有無は、都道府県・政令市が公開している動物取扱業者の登録簿でも照合できます(制度の詳細は環境省「動物の愛護と適切な管理」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/ を参照)。
標識について曖昧な回答をする施設や、登録区分を答えられない施設との終身契約は避けるべきです。
契約前チェックリスト7項目
実測で施設ごとの差が大きかった項目を、契約前の確認リストにまとめました。
- 所有権:飼い主に残るか、施設に移るか(譲受飼養)。医療方針の決定権は誰か
- 返金条件:死亡時・中途解約時の返金が、日数と割合の数値で契約書に書かれているか
- 介護度が上がったときの追加費用:終身料金に介護費が含まれるか、加算されるか
- 医療費の扱い:治療費・入院費は誰が払うか。医療予備費の精算方法
- 看取りと葬儀:立ち会いの連絡はもらえるか。火葬・供養の費用は含まれるか
- 面会と報告:頻度の制限、写真・動画での報告の有無
- 施設の事業継続性:運営年数、法人か個人か、万一施設が続けられなくなった場合の取り決め
7番は見落とされがちですが、終身契約は施設が愛犬より長く存続することが前提の契約です。運営歴と契約書の記載を確認してください。
飼い主が先に動けなくなったときの備え
終身預かりを検討する方の多くは、「自分の入院や万一のあとの愛犬」を心配しています。契約とあわせて、次の3点を整えておくと確実です。
- 契約を引き継ぐ人を決めておく:施設との連絡窓口になる家族・親族を契約書に記載できるか確認する
- 費用の原資を用意する:飼い主の死後に備える方法として、負担付遺贈やペット信託といった仕組みがあります。設計は個々の資産状況によるので、行政書士・司法書士など専門家に相談してください
- 緊急時に施設へ連絡が行く形を作る:かかりつけ医や家族に、預け先の連絡先を共有しておく
終身預かりに向く人・向かない人
- 向いている:飼い主の入院・施設入居・高齢化で、この先の世話が物理的にできない方。自分に万一があったときの愛犬の行き先を確定させておきたい方
- 急がなくていい:介護がつらいだけなら、まず短期預かりや月額利用で十分です。終身はいつでも切り替えられます(→ 老犬の短期預かりはどこに頼む?1泊からの預け先4つと料金実測データ)
終身契約は取り消しの利かない大きな決断です。いきなり終身ではなく、短期→月額→終身と段階を踏めば、施設の介護の質と報告の誠実さを確かめたうえで任せられます。料金の全体像は料金相場の記事を、老犬ホームの基本は入門記事をどうぞ。
→ 老犬ホームの料金相場はいくら?全国48施設の実測データで解説【2026年版】
→ 老犬ホームとは?サービス内容・入所条件・費用を全国調査データで解説
終身預かりでよくある質問
Q. 何歳から終身預かりを利用できますか?
施設の規定によります。実測では10歳以上・13歳以上・満14歳以上など高齢期を条件にする施設が中心でした。年齢が上がるほど一括料金は下がる傾向があります。
Q. 預けたあとも会えますか?
多くの施設で面会できますが、譲渡型(所有権が施設に移る形)では面会の位置づけが施設の厚意になる場合があります。契約前に面会のルールを書面で確認してください。
Q. 亡くなったときは連絡をもらえますか?
看取りの連絡・立ち会いの可否は施設差があります。「危篤時に連絡がほしい」「立ち会いたい」という希望は、契約時に伝えて書面に残すのが確実です。
Q. 遺骨は返してもらえますか?
火葬・供養まで施設が手配する場合の返骨の扱いは、施設と契約内容によります。返骨を希望するなら、葬儀の方法(個別火葬か合同か)とあわせて契約前に確認してください。
終身預かりは「手放す契約」ではなく、愛犬の残りの時間に責任を持つ形をひとつ選ぶ契約です。金額の大きさに気後れする前に、所有権と返金条件という2つの急所を押さえて、短期利用から段階的に信頼を確かめてください。